君の花言葉は僕の太陽

ねぼすけの別名義、遅刻による脳内のお話を置いておくところ

憂鬱に染み込む二人きりのコーヒー【短編】

部長 三上透(34)×部下 佐川あおい(26)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

16:45

退社目前

 


我が社は世間様で言うホワイトな会社であるため残業がほとんどない

 

 

 

 

 

 

 


「ふぅっ」

 

 

(今日はもう終わったし、部長に傘返して帰「佐川ちゃん…ちょっとお願いしたいことが…」

 


と食い気味に話しかけてきたのは先輩の長谷川さん

 

 

 

 

「どうしたんですか??」
「いや実はさ…資料室にこれ、戻しに行かなきゃいけないんだけど、取引先から急に渡したいものがあるって電話来て取りに行かなきゃいけないんだよ…お願いしてもいい?」

 

 

 

 

 

マシンガン言い訳の長谷川と社内で噂になってるだけあってとにかくうるさい


早く振り払いたかったので嫌々引き受けた

 

 

「あーいいですよ〜」
「ごめん!明日のランチ奢る!」
「やったーお疲れ様でーす」

 

棒読み返事にも気づかないくらい光の速さで退社する長谷川さん
あれは絶対言い訳だと確信した

 

 

 

 


(…といっても…まじかこれ)

 

 

 

引き受けたはいいものの大量の資料が積み上がる長谷川さんのデスク

 

 

 

 


「これは、積んだ…」

 

 

「お、佐川くん?残んの?」

 

 

 

 

大きなため息をついて立ちすくむと、背中から声がして振り返る

 

 

 

 

 

 

「あ、部長お疲れ様です!」

 

 

「あ、って何?お疲れ様」

 

 

 

いつものぶっきらぼうな笑顔でツッコミを入れながら話しかけてくれたのは三上部長

 

 

 

 

「部長も残るんですか?」

 

「あ、たまたまな。ていうかこれ、長谷川だろ?あいついつも後輩に押し付けて帰るからな〜」

 

 

 

目を合わせて苦笑いしながら、ため息が定時退社によって誰もいなくなったフロアに響く

 

 

 

 

 


「とりあえず、始める前にコーヒー飲まない?ほれ、リフレッシュ!」

 

 

 

 

「あ、りがとうございます」

 

 

 


ブラックコーヒーが注がれたプラスチックカップに小さくいただきますをして口に含んだ

 

(しかも2人って初めてだ…この前のこともあるからなんか緊張する…)

 

 

 


「ごめん、ブラックだめだった?」

「あ、いえ!大丈夫です!」

 

 

 

先週の金曜日のことを思い出していたからか、いつの間にかしかめっ面を浮かべていた

 

 

 


「なにそんな硬い顔してんの。あ、あれか。金曜のことか?」

 

 

「…」

 

 

 

 

(…なんでわかっちゃうんだろ)

 

 

なにも口にしていないのに思っていたことが当てられていく
もしかしたら部長はエスパーなのかもしれない

 

 

 

 

 

(もっと、知りたい…)

 

 

 

 

 

 


「部長…三上さ、んは、なんでこの前、私に傘渡して行っちゃったんですか?」

 

「知りたい?」

 

意地悪な笑顔で笑う三上さんをいつの間にか見つめることしか出来なくなっていた

 

 

 

 

 

(…笑顔…綺麗な横顔)

 

 

 

 

 

その視線に吸い込まれる
あ、だめだ…

 

 

 

 

 

 

 

 


「またこうやって君と話したかったから。あおいちゃん。」

 

 


「…ずるいよ。三上さ
「透。」

 

 

「…え?」

 

 

 


言い切る前に重なった声に戸惑いを隠せなかった

 

 

 

 


「俺だけあおいちゃんって勝手に呼んでるから、今くらいは、ね?」

 

 

 

 

ずるい、ずるすぎる
この人はどこまでも私の上を行くらしい

 

 

 

 

「…と、透、さん?」

 

「やっと名前で呼んでくれた、あおいちゃん。」

 

 

 

 

 

 

(あ、たぶん、これ、好き…なんだ、きっと)

 

 

 

 

 

 

金曜日の仕返しをするつもりがトドメを刺された挙句、心まで奪われてしまったみたいだ

 

 

 

 

 


憂鬱に染み込む二人きりのコーヒー
花言葉は「あなたのことを知りたい」

 

 

 

 


(おかげで彼のこともっと知りたくなってしまった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

続編です。

部長と部下シリーズ

あおいちゃんが気づいてしまいました。

傘も返せずにwww

 

ゆっくり更新していきます。

気長にお待ちくだされ〜

 

ちこく 

突然の夕立に咲く一輪の傘【短編】

部長 三上透(34) ×部下 佐川あおい(26)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…傘忘れた…」

 

 

 

 

突然、しとしとと降り始める雨
今朝はこうなるとは微塵も感じさせないような日差しが照りつけていたのに
仕事が終わって外へ一歩踏み出そうとした瞬間これだ

 

 

 

金曜だっていうのに今日はとことんついてない

 

 

 

 

 

「しょうがない。濡れて帰るか…」

 

 


下を向き深く肩を落とし、歩きだそうとしたとき背中から声がした

 

 

 

「佐川くん、それじゃ風邪ひくでしょ?駅までなら入れてくけど、傘。」

 

 

 

振り向くとそこには見覚えのある顔

 

 

「え、部長?」

 

 

 

 

きょとんとした私の顔はそっちのけで、ぶっきらぼうなひきつり笑いをして立っていたのは所属している部署の三上部長。

 

 

 


「え、いいですよ!走っていけばそんな距離ないですし!」

 

 

 

偶然にしてはどうも出来すぎたタイミングだとも思ったが私はそのまま外に出ようとした

 

 

 

(てか、部長の笑った顔見たことないな…レアだ…)

 

 

 

「風邪ひいたってのを理由に休まれたら困るからね。ほら、いくぞ。」

 

「あ、ま、待ってください!」

 

 

 

小さな会釈をして部長の隣に並ぶ
半ば強制的にお邪魔してしまった傘は少し狭い
横をちらりと覗くと体格のいい部長の右の肩が少ししっとりしていた

 

 

 

「…あの、部長?」

「ん?どうした?」

 

 

普段通りに返ってくる返事に対して遠慮気味の指摘をする

 

 

 

「なんかすいません…肩、濡れちゃって…」

 

「全然いいよ!むしろ濡れてない?肩。」

 

 

 

普段は気を遣う相手なはずのに今日は逆転しててなんか変な感じ

 

 

 

「あっ大丈夫です!お構いなく!」
と、早口に返したのはいいものの…

 

 

(何話そっかな…気まず…)

 

 

 

 

 

 

 

「佐川くんはさ、雨って好き?」

 

「へ?」

 

 

 

 

突然の部長の言葉に拍子抜けをした返事しかできなかった 

 

 

「…あっああ、ごめんごめん。いや、雨ってちょっと憂鬱じゃん?俺は嫌いかな〜。くせ毛戻るし」

 

 

(部長くせっ毛なんだ、意外…かわいい…)

 

 

 

「雨…突然降られるとちょっと困りますけど、そんなに嫌いじゃないですよ?私は。雨の日セールとかあるんで、たまに雨でも出かけます!」

 

「そうなんだ!」

 

 

 

ふーんと頷くような返事に続けるように口が開いた

 

 

 

「でも俺、今日はちょっと好きかな。雨。」

 

 

 

ちらりと向けられた視線は、普段では見たことのないような柔らかい微笑みだった

 

 

 

「そろそろ気づいてもいいんじゃない?あおいちゃん。」

 

 

「えっ…?」

 

 

 

 

 

突然の事で頭の整理が出来ずにいる間に部長は、いたずらな微笑みを浮かべながら私に傘の柄をん!と押し付けて走って行ってしまった

 

 

 

 

「じゃ!俺ちょっと用事できたからここで!傘、持っていっていいから!!」

 

「え?あ、はい…!!お疲れ様でした!」

 

 

 


嵐のように過ぎ去った彼は、私を一滴も濡らすことなく駅まで送り届けてくれた。


それと同時に私の心には、嵐が上陸したように心拍数が上がっていくのがわかった

 

(どうしてくれんの?この気持ち…)

 

 


突然の夕立に咲く一輪の傘
花言葉は「また君に会う口実」


(月曜日会う時、なんて声かけようかな…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[あとがきの巻]

久々の文章書きです。

なかなか時間かかりました

でもちょっときゅん来てるかなって思い込んでます。

 

最後まで見てくださってありがとうございました〜^^^^

 ちこく